実績
EXAMPLE
1.資本性ローンの事例紹介

① 鉄鋼業A社・埼玉県

売上高 5億円
資本性ローン導入額 5000万円
鉄鋼業の背景

鉄鋼業界は、これまでオリンピック需要が続いたことで好調でしたが、最近は特需がなくなる中で、コロナ禍の国際的な鉄骨相場の高騰により建築コストも高騰したことで工事が減少したため急激に需要が減少し、売上急減している業者が増えています。

資金需要

A社は過去の債務負担のため表面上債務超過(貸借対照表上での債務超過)にあり財務面では問題がありましたが、事業面ではオーダーメイド型の仕事が評価され売上増が続いており工場を拡張するための設備資金を必要としていました。

結果

設備資金は埼玉りそな銀行と信用保証協会からの調達で賄うことができましたが、更に売上拡大に伴い急増した運転資金を補強するため、日本政策金融公庫(と埼玉りそな銀行)から資本性ローンも導入でき、当面は返済不要となったことで資金繰り不安は解消し、新工場も機能して最高益を確保しています。

勝因

資本性ローンにより、運転資金も補強され、債務超過も解消されたことから弱点であった財務も大幅に強化されました。
もともと事業改善に取り組んでいたA社は地力を発揮し売上が増加しつつあったため、これまでの銀行と合意していた現計画を破棄し、新たに設備投資計画を提示し、銀行が納得する収益向上可能性などを示せたことによります。
設備投資も思い付きではなく、客観的合理的な説明力が備わることで初めて銀行もその将来性を理解できるようになります。

② 飲食業B社・東京都

売上高 15億円
資本性ローン導入額 1億5000万円
飲食業の背景

飲食界はコロナ禍による大打撃で売上が激減しており、雇用調整助成金や休業補償で何とかその赤字の一部を補っている状態なのはマスコミが報道しているとおりです。

資金需要

B社もそのような中で、コロナの影響が大きい居酒屋など大きく赤字転落したため、赤字店舗の閉鎖を急いでいます。運営を継続している店舗でも雇用調整助成金を活用しつつ最小限のシフト調整など人件費の抑制に努めていますが、それでも毎月赤字の状態で、2期連続の赤字決算となっています。

結果

コロナ制度融資を最大限に活用し、信用保証協会の「コロナ制度融資」だけでなく、日本政策金融公庫の「資本性ローン」も最大限活用し、このまま赤字が続いても当面3年は営業が継続できるだけの資金を調達することができました。
そのため出店資金も調達できテイクアウトの店を出すことができましたが、これまで取り組んできたコスト削減により赤字が縮小しつつある中で、新店がもたらす利益が加わり、緊急事態宣言が影響している今期であっても3期目にして黒字転換できる見通しが立っています。
現在ではコロナの影響が少ないテイクアウトなど小型店をターゲットにして新たな店舗出店を検討中しておりV字回復が目前にあります。

勝因

コロナ禍による融資制度があるため、一般的にここ2年間は簡単に資金調達ができています。
ただし将来の収益改善見通しを誤り、例えば2年で黒字回復するとしていた場合、3期目も赤字が続くと急激に資金が枯渇します。銀行は黒字回復するまでの最小限の資金しか融資しないからです。
当初から保守的な収支見通しを立てることが肝要です。コロナが収束すれば業績も改善することを合理的に説明して最大限の資金調達をするのです。
コロナ対応型の資本性ローンの場合、2年間は利息も支払不要なので5年間でみてもほぼ他の借入金と利息に差はなく、返済も当面不要なので資金は余剰となりました。
現状はコロナの影響がいつまで続くか予測することが難しいですが、そうであっても収益回復力を合理的に示せるだけの計画書を取りまとめることが追加資金調達には必要です。

③ 鉄鋼スクラップ業D社・栃木県

売上高 20億円
資本性ローン導入額 5000万円
鉄鋼スクラップ業の背景

現在はコロナ明けの反動で未曾有の資源高となっているため、業況は絶好調で今期は最高益を更新しそうな勢いがありますが、資本性ローンを導入した当時の7年前は景況も厳しく、日本政策金融公庫だけでなく他の銀行からの金融支援も必要な状況にありました。

資金需要

厳しい景況から運転資金も不足していましたが、日本政策金融公庫の資本性ローン(当時は単に「劣後ローン」と呼ばれていました。)を導入した背景はD社の個別の事情からです。
D社の関連会社に赤字の金属加工会社があり、その会社の借入金が返済不能な状況にあったため、D社が救済のためこの関連会社の吸収合併(借入金の承継含む)が必要となり、吸収後も当面は赤字解消ができないことからその間の返済の減額が必要だったものです。

結果

日本公庫との交渉の結果、公庫からの借入金は資本性ローンを導入することで完済させ、当面5年間の返済が不要となったことから資金繰りは大幅に改善しました。その結果、他の銀行の返済も支障なく進めることができ、5年目の一括償還もその償還資金を借入金で調達することができ、その後の分割返済で完済することができました。

勝因

当時鉄鋼スクラップ業界の景況は決して良いものではありませんでしたが、D社は取引先が上場企業等優良で、D社の製品の品質が高いことが評価されていたため、会社の収益力には問題がないことを理解していただいたことによります。
結果一時的に不採算事業を承継するだけであり、その不採算事業も黒字化できないものは整理することにしたため、公庫を含め全金融機関が支援に合意していただき、その結果、現在では最高益を更新しています。

2.資本性ローン以外の資金調達の事例紹介

① 建設業A社・栃木県

売上高 18億円
調達額 1.5億円
建設業の背景

建設業界は1990年代以降一貫して公共工事の予算縮減が続いており、特に土木工事主体の建設業者は毎年完工高の減少に苦しんでいます。このため民間建築分野に進出する業者も増えたことから、民間建築分野も過当競争が激化しています。
A社もそのような環境の中で売上を確保するために民間建築工事の大型案件で赤字受注にまで走ってしまい、結局大幅な赤字を計上している状態でした。
当然銀行からは債務超過を疑われたため、銀行からの依頼で当社が調査をすることとなりましたが、その結果、実質債務超過(貸借対照表上では資産超過なのに、実態は債務超過の状態)であることが明らかになってしまいます。

資金需要

A社は土木工事から脱却し、本業(建設業)で新しい収益の柱を育てたいという社長の強い意志の下で、大型木造建築工事の開拓を進めていました。
もともとA社の創業当時は木材業でしたので、もともと持っていたノウハウをさらに発展させることにした訳です。
実際に営業活動を進めていくと、木造建物の「優しい風合い」や「温かみ」「癒し」といった特性に需要があり、高齢者施設や幼稚園園舎などで受注が拡大しつつありましたが、これら建築物は補助金の関係もあり、工事代金が完成後数ヶ月待たないと入金されず、工事期間中+3ヶ月くらいは自己資金で賄わなければならず、慢性的な資金不足に陥ります。

結果

A社は債務超過の状態にありましたが、それでも売上拡大で急増した運転資金を銀行から調達でき、社長は安心して受注活動に専念することができました。その後も太陽光発電や観光事業など次々と新規事業を立ち上げていきますが、その都度、円滑に資金調達ができ毎年のように売り上げが拡大し最高益が続いています。
結果、債務超過も数年で解消しています。

勝因

一つ目として、過去の赤字受注の経験もあり、工事利益確保のため効率化を地道に進めた結果として、経営改善計画書で示した収益改善が順調に進んだことがあります。
二つ目として、新規分野開拓のタイミングでこれまで銀行と合意していたその計画書をあっさり破棄し、新たに事業拡大のための中期経営計画に切り替えました。そしてその計画書で新分野の成長余地などを客観的に示しそれに銀行が納得したことによります。
新分野開拓は思い付きではなく、客観的合理的な説明力が備わることで初めて銀行もその将来性を理解できるようになります。

② 資材販売商社B社・栃木県

売上高 7億円
調達額 1.2億円
資材販売業の背景

B社は肥料など農業関係の資材販売業です。農業は景気の影響をあまり受けない業界でしたが、コロナ禍の影響は受けました。
なぜかというと外食需要が大きく減ったことで、飲食店など外食産業全体で業務用米の消費量が減ったため、ここ1-2年の間、米価が大きく下がっているのです。
米価が下がれば自ずと農家の売上(売価)は減るので、肥料を投入して収穫量を増やそうというモチベーションも収縮します。従ってこの業界は景気が悪化しているのです。

資金需要

B社はこのような農家やその代理店を取引先にしていますが、最も売上のあがる春(田植え前)に肥料を販売しても農家が田植えをした稲を収穫するのは秋です。
収穫後主に農協に販売して代金を得たときにようやくB社の売掛金が回収されるので回収サイトの長期化で慢性的な資金不足に陥るからです。
そのような中でコロナ禍の販売不振が資金繰りに大きく影響しました。

結果

B社は債務超過の状態にありましたが、それでも必要な運転資金を銀行から調達でき、社長は安心して受注活動に専念することができました。その結果、業績も毎年少しずつ改善しており、増収増益が続いています。
現在は懸案だった債務超過解消のため、第二弾として会社の事業不動産への投資と遊休不動産の売却を同時に進めるため新たな経営改善計画書を作成中です。
不動産購入資金とさらなる運転資金もこの計画を通じて追加で調達することになっています。

勝因

一つ目として、この会社は肥料販売以外に内装資材の販売業もやっていますが、内装の方が堅調で毎年販売を増やしていたことです。こちらは実力のある営業マンを他社から招き入れたり、資材メーカーと提携して商品開発をするなど不安定な肥料販売を補える事業に育ったことがあります。
二つ目として、肥料も独自の営業スタイルを採っており、それぞれの田畑に合わせた施肥方法をアドバイスしたり、品種に合わせたブレンド肥料をメーカーと独自に開発したり、付加価値の高い提案型営業を一貫して強化しており、このような取り組みもあって、コロナ禍の営業不振は一時的なもので、コロナ明けには業績もさらに向上するというシナリオに銀行が納得したことによります。
業況が厳しくてもそこで何か不足しているか真正面から取り組み、地道な努力を続けることが事態を打開する原動力になります。

③ 砕石業C社・栃木県

売上高 12億円
調達額 1.4億円
砕石業の背景

砕石業界は長らく公共工事の縮小により低迷が続いていましたが、7-8年前からはオリンピック需要があり、関東圏では特に業況が回復していました。
砕石は主に道路の路盤材や建物の基礎材として使われるのでインフラ整備や建築需要の拡大に応じて業況が拡大します。

資金需要

C社も増収増益で最高益に達する状態でしたが、そのような絶頂期に鉱区内で岩盤の崩落事故が発生し、従業員が亡くなる人身事故が発生しました。その結果、現場検証や監督官庁の検査など必要となり3ヶ月間営業を停止せざるを得ませんでした。
その間に主力取引先の取引も解消され、売上は大幅に減少することになります。
そのため営業停止期間中及び売上を回復させるまでの間の運転資金が必要となりました。

結果

C社は債務超過の状態にありましたが、それでも必要な運転資金を銀行から調達でき、社長は新たな販路を開拓するまでの猶予期間を得ることができました。結果として、鉄鋼メーカー向けの資材商社との取引ができ、赤字解消の見通しが立つことができました。
その後も業績拡大の成長過程に入るには時間が必要となりますが、利益が少しずつ計上できるようになり最悪の時期は脱出しました。

勝因

資材商社との取引に販路拡大の可能性があったことです。C社の砕石は珪度が高かったため単に道路に埋めるのではなく、鉄鋼材や住宅建材を作る際の触媒という工業製品としても利用できるものでした。
そのためこの鉄鋼資材を販売する商社に対しての販促強化した結果、売上高は事故前より減りましたが高価格で売れることから利益は大きく減ることなく、生産上の効率化を進めることができ、利益率の向上策を経営改善計画書で示したことで銀行の信頼を勝ち取ることができました。